少しずつ人間味を増す犀川先生と、自由奔放に見えて実はナイーブであることが判明する萌絵が、まるで実在の人物のように生き生きと動き出し、シリーズ物であることの魅力を余すことなく堪能することができます。

『すべてがFになる』『冷たい密室と博士たち』『笑わない数学者』『詩的私的ジャック』では、比較的早い段階で謎が発生したような記憶がありますが、この『封印再度(Who Inside)では、背景の説明に時間をかけて、謎が出てきそうで中々出てこないですねぇ~ また、大胆な萌絵と煮え切らない犀川との会話も洒落ています。このシリーズが愛され続けている理由が分かりますね。

2ヵ月ぶりに読んだS&Mシリーズの5作目は、「すべてのトリックに隙が無い」とは言えないですけれども、バランスの取れた物語でした。森博嗣さんの文章は短期間で読みやすく進化しており、少しずつ人間味を増す犀川と、自由奔放に見えて実はナイーブであることが判明する萌絵が、まるで実在の人物のように生き生きと動き出し、シリーズ物であることの魅力を余すことなく堪能することができます。多くの読者が自分が犀川研に属している学生のような臨場感も味わい感情移入することでしょう。森博嗣さんが犀川の台詞を借りて語る哲学的な言葉も興味深いです。

若い作家さんが精一杯背伸びして書いたような作品も悪くないけど、作家が感じているプレッシャーまで伝わってくる感じが重苦しい時ってありますよね。それに比べると森博嗣さんの作品は、イチローみたいな選手が、バッティングピッチャーの避孕藥ボールを打っているような余裕を感じて心地よいですぅ

森博嗣さんの作品は、良くも悪くも純粋にフィクションとして楽しめる感じがありますね。